自動車保険の「個人賠償責任特約」は必要?補償内容と使い方を詳しく解説
こんにちは。普段、お客様から自動車保険のご相談をいただく中で、「個人賠償責任特約」について「これはどんな時に使うの?」「自動車保険という名前がついているから、車に関係する事故しか使えないの?」といったご質問をいただくことがあります。
確かにお名前だけでは少し分かりづらいですよね。
また、お子さんがいらっしゃるご家庭では、「子どもが友達と遊んでいて、誤ってケガをさせてしまった」「お店で商品を落として壊してしまった」といった、日常生活での思わぬトラブルを心配される声もよくお聞きします。
実は、このような自動車事故以外の日常のトラブルを幅広くカバーしてくれるのが、自動車保険に付けられる「個人賠償責任特約」なのです。
今回は、この個人賠償責任特約について、保険のプロである私の視点から、その必要性や具体的な補償内容、加入する際の注意点まで詳しく解説していきます。
■個人賠償責任特約とは?
結論から言ってしまうと、個人賠償責任特約とは、「日常生活において、偶然な事故で他人にケガをさせてしまったり、他人のモノを壊してしまったりして、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる」という特約です。
一番のポイントは、自動車事故が関係ない事故でも補償の対象になるという点です。月々百数十円程度の保険料で加入できるにもかかわらず、非常に守備範囲が広いのが特徴で、私はお客様に「ほぼすべてのご家庭で加入をおすすめしたい特約です」とご説明しています。
補償される人(被保険者)の範囲は?
この特約のもう一つの大きな特徴は、一人分の保険料で、ご家族全員が補償の対象になる点です。具体的には、以下の範囲の方が補償されます。
本人
本人の配偶者
本人または配偶者と「同居」の親族
本人または配偶者と「別居」している未婚の子ども
例えば、大学進学などで一人暮らしをしているお子さんが起こした事故も、この特約でカバーできるケースがあるのです。
■どんな時に使えるの?具体的な補償事例
「日常生活の事故」と言われても、具体的にイメージが湧きにくいかもしれません。ここでは、実際に保険金のお支払い対象となることが多い事例をいくつかご紹介します。
お子様に関するトラブル
公園でボール遊びをしていて、誤って他人の家の窓ガラスを割ってしまった。
お友達とふざけていて、相手にケガをさせてしまった。
スーパーで走り回り、商品を棚から落として壊してしまった。
自転車でのトラブル
自転車で走行中、歩行者にぶつかり、後遺障害が残るほどの大きなケガを負わせてしまった。
駐車している他人の高級車に自転車でぶつかり、傷をつけてしまった。
自宅でのトラブル
マンションで、洗濯機のホースが外れて床が水浸しになり、階下の部屋にまで被害を与えてしまった。
ベランダの植木鉢が強風で落下し、通行人や駐車中の車に当たってしまった。
ペットに関するトラブル
散歩中に、飼い犬が他の人に噛みついてケガをさせてしまった。
その他のトラブル
友人宅で、うっかり高価な花瓶を倒して壊してしまった。
スキーやゴルフのプレー中に、誤って他人にケガをさせてしまった。
【具体的な事例】自転車事故で9,500万円を超える賠償命令も
近年、特に高額な賠償事例として注目されているのが自転車事故です。過去の判例では、小学生の男の子が乗った自転車が歩行中の女性と正面衝突し、女性に重大な障がいが残ったとして、その母親に約9,521万円もの損害賠償が命じられたケースがありました。このような万一の事態に、保険なしで備えるのは非常に困難です。
■加入前に確認すべき3つの注意点
非常に便利な特約ですが、加入を検討する際にはいくつか確認していただきたいポイントがあります。私たち保険代理店のプロが必ずチェックする点でもありますので、ぜひ参考にしてください。
1. 「示談交渉サービス」は付いているか?
個人賠償責任特約には、保険会社が被害者との交渉を代行してくれる「示談交渉サービス」が付いているものと、付いていないものがあります。
万が一事故を起こしてしまった場合、被害者の方と直接やり取りをするのは精神的にも大きな負担になります。保険のプロが間に入ってくれる示談交渉サービス付きのプランを選ぶことを強くお勧めします。
2. 他の保険と補償が「重複」していないか?
この特約は、自動車保険だけでなく、火災保険や傷害保険にも付けられることがあります。もし複数の保険でこの特約に加入していても、実際に支払われる保険金は損害額が上限となるため、一つにまとめておかなければ保険料が無駄になってしまいます。
ご加入中の保険証券を一度すべて確認し、補償が重複していないかチェックしてみてください。もちろん、私たちのような代理店にご相談いただければ、ご家庭の保険全体を拝見し、最適な形をご提案することも可能です。
3. 保険金額はいくらが妥当か?
保険金額は「1億円」や「3億円」、「無制限」などから選べますが、先の自転車事故の例のように、近年の賠償事例は高額化する傾向にあります。保険料の差は年間で数百円程度ですので、万全を期すのであれば「無制限」を選んでおくとより安心でしょう。
■まとめ
今回は、自動車保険の個人賠償責任特約について解説しました。内容を簡単にまとめます。
個人賠償責任特約は、自動車事故以外の日常生活の賠償事故を幅広く補償する。
保険料は月々百数十円と手頃だが、本人だけでなく家族全員が補償の対象になる。
子どものトラブル、自転車事故、水漏れなど、具体的な補償範囲は非常に広い。
加入時は「示談交渉サービスの有無」「他の保険との重複」「保険金額」を必ず確認する。
自動車保険というと、どうしても運転中のリスクにばかり目が行きがちです。しかし、私たちの日常生活には、予期せぬ様々なリスクが潜んでいます。
月々わずかな保険料で、ご家族全員の毎日を守ることができる個人賠償責任特約は、いわば「家庭のお守り」のような存在です。ご自身の自動車保険にこの特約が付いているか、この機会にぜひ一度確認してみてはいかがでしょうか。
もしご不明な点や、ご自身の保険内容の確認について相談したいことがございましたら、いつでもお気軽にお声がけください。